放射能問題について

このところ仕事が忙しく、このサイトへ投稿する機会がほとんどない。
昨年末に海外に2回行った時の動画や、その他のネタは溜まっているのだが、まとめる時間が無い。
夏になったら時間がとれるだろうか?

そして、今考えているネタだけど「夏に福島に行って放射能を測定してくる」というものがある。
震災から2カ月がたち、地震の直接の被害が忘れられていく(これも良くないことだが)なかで
どうも「年20ミリシーベルト」の是非で専門家の中でも意見が分かれている。
いや、専門家だからこそ長年にわたって染みついた「反原発」や「原発推進」の色が公正な視点を邪魔しているのだろう。
専門家の意見でも「それをそう解釈するのか?」というものが多い。
これでは一般の人々が混乱するのは当然だ。
だからこそ、しがらみのない立場で現状を知らせ、その上で「冷静に考えよう」という材料を提供したい。
また、「校庭は8月までに何とかする」という話が守られているのかを確認する意味もある。

僕は放射線の専門家ではないけれど、放射線の出ている環境で仕事(研究)をしたことはある。
また、X線の扱いの講習で基本的な物の考え方は学習した。
そこで学んだのは、いわゆる「LNT仮説」であり、「低線量であっても危険かもしれない」という予防的な考えだ。
それを元に現状についての感想を書くと
「どの程度のリスクなら許容すべきか」という議論が、日本の社会から抜けている
ということを強く感じる。

例えば、「年20ミリシーベルトは高すぎる」という意見の人の説明にこんなものがある。
「放射線被曝には、これならば安全と言うものは無いのです」
そして、「年1ミリシーベルトにするべき」とか「年10ミリシーベルト」という声が出る。

でも、「”安全な被曝量”は無い」のであれば、「1ミリシーベルト」でも危険なはずだ。
LNT仮説を取るならば、1ミリシーベルトでも1万人に1人くらいは癌になる。
仮に福島近隣もあわせて1000万人が1ミリシーベルト以上の被曝をしたのなら、1000人が癌になる。
避難しないで住み続け、たとえば年1ミリシーベルトを10年間受ければ累計10ミリシーベルト。
10000人が癌になる。

そうすると、「1ミリシーベルトにするべき」と言う人は「10000人位なら許容範囲」という考えのわけだ。
でも、それを言わない。
「10000人程度なら仕方ない」という意見を言った途端、その人は「非人道的だ」と叩かれるだろう。
特に「反核」の人は「人道的」という立場を取ることが多く、そんな評価は受け入れられないだろう。

「年20ミリシーベルトはけしからん」という専門家も「なら、幾らにするべきか」は言えない。
その判断基準の説明を求められたときに「~人なら仕方が無い」と言わざるを得ないからだ。
記者会見で「年20ミリシーベルトは認めていない」と言いつつも「では何ミリシーベルトか」を聞かれるとお茶を濁す。
20ミリシーベルトで100人に1人は癌になるかもしれない、子供ならもっとかも、
ということが「認められない」のなら、「どこまでを認めるか」もいうべきだと思う

でも、世間の反応が怖いから言えない。政府だって「~人までなら仕方が無い」と言ったら首相の首が飛ぶ。
仕方がなく「過去の法との整合性」や「ICRPの勧告」という他の権威を持ち出す
そこでも緊急事態等の考え方や政府の対応の見通しがはっきりしないために全体像が把握できないでいる。
どの程度の危険があるのか、誰もハッキリさせないまま、曖昧な状態が続く。

日本社会が未だに「ゼロリスク」の幻想にとらわれているのだろう。言い方を変えると「平和ボケ」。
「世界唯一の被爆国だから核には敏感」という謳い文句がいかに虚しいものか。
過去から学ぶのではなく、過去から逃げてきただけじゃないか。

僕自身は「年間20ミリシーベルトで8月までなら、累積は約10ミリシーベルト。なら許容範囲では?」と思ってる。
仮に3月までに10ミリシーベルトを受けていたとしても、年齢や内部被曝を考慮しても、10%までは行かないだろう。
発がん率は、自然の発がん率(約50%)から僅かに上昇するくらいだ。
それを問題視するならば、もっと他に考えるべきことがあるだろう。
野菜を多めにする、早期発見のために検診を増す、などで十分に対応できると思う。
そして、そのような行動を社会として支えるためには「何故それが必要か」を明示する必要がある
いつまでも放射能のレベルを高いままにしておくのではなく、除染するための予算も付けなければならない。
そのためにこそ「これこれこの程度のリスクがあります」ということをハッキリさせることが社会の義務だろう。

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ところで、先日「たかじんの~」を見ていて、ホルミシス派の説明を聞いてびっくりした。
「台湾で鉄骨に放射性物質が混ざるという事故があった。しかし、住民はかえって健康になった」
という話だ。
これは放射線安全研究センターでも報告されており、そういう研究があったこと自体はウソでは無い。
しかし、その後で更に詳しい調査があり、2008年には
やはり、100ミリシーベルトで白血病が有意に増える
という結果が報告されている
(広島や長崎での被曝の追跡調査とほぼ同じ結果であり、放射線被曝の危険性の認識を変えるものではない)

放射線の専門家ならば、この事故を知らない人はいないだろうし(有名な事故で、非専門家の僕でも知っていた)
複数の論文を読んでいるはずだ。
自説にとって都合がよい一方の主張だけを、しかも古い論文の方を紹介するというのは、研究者としての誠意に欠けると思う。
仮にその先生が「こちらの論文は~という理由で信頼性に欠ける」という判断があるのなら、議論があることを紹介した上で、それも明らかにしてほしかった。

ホルミシス効果の有無については、僕には判断ができない。
「一度に100km走れば死ぬけど、毎日1kmのジョギングは健康に良い」
のような類推からは、「そういうこともあるかもしれない」程度のことしか言えない。
でも、「まだよく分かっていない効果」については、はっきりするまで「念のため避けておこう」というのが賢明な気がする。
研究が進んで「健康に良い」ものであるならば、それが明らかになることを待ち望んでいる。
だからこそ、「研究にバイアスがかかってるんじゃないの?」と疑いを持たせるような、番組の中での態度は残念だった。

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