政治家の議論って

======以下、退屈な前フリ=====
震災以来、政治の重要性が再認識されているように思う。
本来ならば”平時”であっても、その”平時”を保つ不断の努力として政治が極めて重要なのだが、これまでの日本では「帝力何ぞ我にあらんや」で無関心な人たちがその時々の雰囲気で動き、マスメディアがエンターテインメントのように大衆を煽っていた。
その結果が民主党のような「その場しのぎの口先だけ」の政治家に権力を与えてしまったことは、有権者が反省すべきことだろう。
今後は「政治家が何を言っているのか」を雰囲気では無く、内容をみて理知的に判断することが必要だと思う。

そこで、その内容を判断するための大衆向けの情報源の在り方が問題になる。
テレビでは、大袈裟なBGM、コメンテーターの話し方など、「雰囲気」を重視したつくりになっている。
また、図表が用いられることもあるものの、メインは「しゃべり」であり、十分に思考する時間も無く次から次へと話題が変わる。
これでは内容を吟味して判断を下す材料にはなりえない。
NHKのニュース等ではまだマシだが、短時間で話が切り替わり、編集もあって信用に足りる情報源では無い。

新聞では、情報量もテレビに比べて多く、何度も読み返すことが可能だが、「退屈である」というのが最大のネックだろう。
長文を読み慣れている人は多くは無いし、政治家の話には残念ながら無駄な部分も多い。
また、「情報量が多い」といっても紙面には限界があり、その紙面に書かれたことを超える情報は得難い。
そもそも、その新聞を発行する新聞社の編集もある。「KYって誰だ」の事件のように、特定の情報源、新聞社に信頼を寄せることは危険である。

そこで、ネットによる情報が望ましい情報源として挙げられる。
ネットでは、動画+テキストでテレビ以上に人の興味を引くことが可能であり、何度でも繰り返して内容を確認することができる。
これは、テレビと新聞の長所を併せ持つ。
また、クリックで関連する情報に飛ぶことが可能であり、時間や紙面といった制限が無い。
何よりも、ネットでは様々なソースを比較することが可能であり、特定の編集者によるバイアスが相殺されて、全体としての中立性を保つことが期待できる。

しかし、ネットではまだ十分に議論をする文化が成熟していない。
昔は掲示板、ブログ、SNSときて最近ではツイッターなどができており、ようやく議論らしきものが可能になってきた。
なぜ、ネットでは議論が難しいのかには、掲示板時代から連綿と続くサイトの構造の問題がある。
「インターネットの弱点」ではなく、制限がある旧メディアの表現形式を引きずっているから「インターネットの強み」を活かせてないだけだが。

=====で、本題=====

サイトの画面は、基本的に「横書き、1カラム、上から下へ」である。この雑記もそうだ。
だから、長々と主張が書かれ、続いてそれに対する応答も長々と続くと「何についての話か」を把握することが難しくなる。
議論とは、ある問いに対して応える、一問一答が基本形。
つまり、「1対1」の対応関係をハッキリさせることが必要である。
2ちゃんねる型掲示板では、長いスレッドでも「>>100」のように、どのレスに対する書き込みなのかが簡単に分かる。
ツイッターでは、主題を一つに絞った短い書き込みに対しての短い返信として「何についての話か」がハッキリする。
この「簡潔な対応関係」が、ネット上での議論の場として人気がある理由だろう。

では、政治家の長々とした話、国会での質疑を簡潔に分かりやすくするためには、どうすればいいだろうか?
一つの方策として「対応表」にまとめることがある。
つまり、話の流れという時間軸を「上から下へ」でまとめるのと同時に、一問一答の対応という新たな軸を横にとる。

実際に、従来の「上から下へ」の書き方と、対応表を比べてみる。

ソースは、適当に国会会議録(第19号 平成23年6月10日)。長いので比較的短いところを切りだしてみた。
赤字部分は、私の主観で「ポイント」と感じた部分。

=====「上から下へ」型=====
○林芳正君 今の御答弁ですと、もうカツオは逃げちゃったということですね、六月中下旬ですから。サンマも間に合うかと。
総理、せっかくですから、一定のめど、いつか分かりませんけれども、最後の御奉公ということで、復興会議の一次提言は待つ必要ないからすぐにこのマスタープランを作れと、この場で農水大臣に言っていただけませんでしょうか
○内閣総理大臣(菅直人君) 復興会議という形で基本的な青写真をお願いをいたしております。
しかし、同時に、現在、内閣として取り組むべきことは当然ながら取り組むべきでありまして、それらを、一次補正で取り組めることはやったつもりでありま すが、ほかの課題においてもそうした内閣の責任でやるべきことはやるべきだと。ですから、可能なもの、あるいは明らかに必要なもの、それについてはできる だけ実現するように検討をお願いしたいと、こう思っております
○林芳正君 重ねて、今どっちにも取れるような御発言だったんで、六月末に出る復興構想会議の一次提言を待たずに、万が一それと矛盾するよ うなことの可能性があっても、このことは急いで、カツオなんかに間に合うようにやっていいですよということを一言総理が言ってくれれば、多分水産庁は動け ると思うんですけれども、総理、いかがですか。
○内閣総理大臣(菅直人君) 最初から、矛盾してもというふうに言われますと、矛盾しないようにするのが望ましいことは確かですし、もうだ んだんと議論が煮詰まってきておりますので、私は、そういう議論の煮詰まり方も見ながら、早めにやるべきことはやっていただいて結構だし、それは農水省の 中で検討をいただきたいと。
何か初めから、矛盾するのは構わないという言い方で申し上げることではなくて、急ぐべきものは急いでやりましょうということは当然のことだと思っています
○林芳正君 そういうふうに総理がおっしゃると動けなくなるんです。だから、わざわざ、そういう場合はないと思うけれども、よしんばそういう場合があったとしても俺が責任を取るから、俺が五百旗頭さんを説得するからやれと、その一言が総理から出ないから駄目なんですよ。
六月末に提言が出て、カツオは六月中下旬なんですよ。間に合わないじゃないですか。なぜその一言を言えないんですか
○内閣総理大臣(菅直人君) まさに、そのシーズンというものがある中で、例えばこの時期にやらなければ意味がないというものは、それはもちろん構想会議の結論を待たないでもやっても結構だと思います
○林芳正君 やっても結構というのを今水産業の方がどういうふうに聞いておられたか、非常に悲しい思いがしました
もう次に行きます。

=====「対応表」型=====

林芳正君 内閣総理大臣(菅直人君) 対応関係
今の御答弁ですと、もうカツオは逃げちゃったということですね、六月中下旬ですから。サンマも間に合うかと。
総理、せっかくですから、一定のめど、いつか分かりませんけれども、最後の御奉公ということで、復興会議の一次提言は待つ必要ないからすぐにこのマスタープランを作れと、この場で農水大臣に言っていただけませんでしょうか
復興会議という形で基本的な青写真をお願いをいたしております。
しかし、同時に、現在、内閣として取り組むべきことは当然ながら取り組むべきでありまして、それらを、一次補正で取り組めることはやったつもりでありま すが、ほかの課題においてもそうした内閣の責任でやるべきことはやるべきだと。ですから、可能なもの、あるいは明らかに必要なもの、それについてはできる だけ実現するように検討をお願いしたいと、こう思っております
「総理から農水大臣へ言ってくれ」という要望に対して、「お願いしたいと思っている」と述べるにとどまる。
重ねて、今どっちにも取れるような御発言だったんで、六月末に出る復興構想会議の一次提言を待たずに、万が一それと矛盾するよ うなことの可能性があっても、このことは急いで、カツオなんかに間に合うようにやっていいですよということを一言総理が言ってくれれば、多分水産庁は動け ると思うんですけれども、総理、いかがですか。 最初から、矛盾してもというふうに言われますと、矛盾しないようにするのが望ましいことは確かですし、もうだ んだんと議論が煮詰まってきておりますので、私は、そういう議論の煮詰まり方も見ながら、早めにやるべきことはやっていただいて結構だし、それは農水省の 中で検討をいただきたいと。
何か初めから、矛盾するのは構わないという言い方で申し上げることではなくて、急ぐべきものは急いでやりましょうということは当然のことだと思っています
「思っている」ではハッキリしないので、「言ってくれ」という要望を繰り返したのに対して、「検討してくれればいいなと思う」と答える。
そういうふうに総理がおっしゃると動けなくなるんです。だから、わざわざ、そういう場合はないと思うけれども、よしんばそういう場合があったとしても俺が責任を取るから、俺が五百旗頭さんを説得するからやれと、その一言が総理から出ないから駄目なんですよ。
六月末に提言が出て、カツオは六月中下旬なんですよ。間に合わないじゃないですか。なぜその一言を言えないんですか
まさに、そのシーズンというものがある中で、例えばこの時期にやらなければ意味がないというものは、それはもちろん構想会議の結論を待たないでもやっても結構だと思います 「一言、ハッキリと『やれ』と明言してくれ」という要望に対して、「やってもらっても結構だと思う」と、あくまで「他人の判断に任せる」という立場。
やっても結構というのを今水産業の方がどういうふうに聞いておられたか、非常に悲しい思いがしました
もう次に行きます。
総理はリーダーシップを取ることができない、ということを確認したので次の話題に移る。

というように整理できる。
表の形にすることで、「上から下」へ読み下すよりも対応関係をまとめやすくなったと思う。
林議員の要求が何であり、菅総理がそれに答えていないことが簡単に分かる。
また、新たに列を加えることで、感想などの新たな要素を元の議論とは分けて並べることも簡単だ。
これは

で試みられていることと同じで、門外漢の理解を助ける。

発言の内容は編集してはならない。
しかし、「何を聞きたかったのか、回答をどう受け取ったか」は編集者の主観が入って良い。
その主観は、例えば自民党側の立場、民主党側の立場で変わるだろう。
しかし、それを有権者が元の発言と比較し、各々の立場で書かれたものを読むことで公平さは保たれる。

各政党には、このように議論を分かり易く整理したものを各々で公表してもらいたい。
また、有権者も議論を整理することを学び、内容を読み取る訓練することで「賢い有権者」に成長することを望んでいる。
自分も含めて。

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